対談コラム TONOSESSION
第二回 飯盛義徳 氏 × 殿内崇生

飯盛義徳 氏
略歴:1964年、佐賀市生まれ。長崎私立青雲高等学校、上智大学 文学部を卒業後、1987年、松下電器産業(株)入社。富士通(株)出向などを経て、1992年、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科修士課程入学。1994年、同校修了(MBA取得)後、飯盛教材株式会社入社。1997年、常務取締役。2000年、佐賀大学 理工学部寄附講座客員助教授。また、アントルプレナー育成スクール「鳳雛塾」を設立。2002年、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科博士課程入学。2005年、慶應義塾大学 環境情報学部専任講師。2007年、博士 (経営学)。2008年、同大学総合政策学部准教授、2014年、同大学総合政策学部教授、現在に至る。
専門は、プラットフォームデザイン、地域イノベーション、ファミリービジネスなど。鳳雛塾は、日経地域情報化大賞 日本経済新聞社賞などの賞を受賞。総務省 過疎問題懇談会委員、総務省 ふるさとづくり懇談会委員、総務省 人材力活性化研究会座長、国土交通省 奄美群島振興開発審議会委員などを務める。
「地域にふさわしいアントルプレナー育成モデルを目指して」(日本ベンチャー学会)、「地域情報化プロジェクトにおける事業創造のマネジメント」(情報社会学会)、「ファミリービジネス教育の可能性と課題 -慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの実践を通して-」(ファミリービジネス学会)、など論文多数。主著に『「元気村」はこう創る』(日本経済新聞出版社、2007 年)、『ケース・ブックIV 社会イノベータ』(慶應義塾大学出版会、2009年)、『小学生のためのキャリア教育実践マニュアル』(慶應義塾大学出版会、2011年)、『慶應SFCの起業家たち』(慶應義塾大学出版会、2013年)、『地域づくりのプラットフォーム』(学芸出版社、2015年)ほか。 (HPより抜粋させて頂きました)
殿内理事長
横浜青年会議所の2016年度の運営テーマを「創発」としました。私にとって創発とは個と個の多様性を組み合わせることによって想像以上のパワーを創出することであり、様々な事柄を掛け合わせて行きたいと考えています。
飯盛先生
私は、「創発」を研究テーマとしています。また、以前、父親が経営する会社に勤めていた時に青年会議所に入会していたこともあり、青年会議所の活動に対してはよく理解しております。
殿内理事長
青年会議所は、日々の活動の中で行政・大学・企業の方々との関わりを持たせて頂いていますが、もっと連携性が深めるべきであると私は考えています。青年会議所だけではなく、他の団体と協力して多様なものを受け入れて新たなものを発信していきたいと考えているのです。飯盛先生に取って青年会議所はどのようなイメージをお持ちですか。
飯盛先生
あるところで地域づくりについて講演した際に、地域づくりの主体って誰なのだろうということで青年会議所について取り上げたことがあります。地域づくりは、行政だけが取り組むものではありません。市民・行政・大学・企業、みんなで力を合わせてプラットフォームを構築して、自分が主体となって活動すべきなのです。青年会議所メンバーの多くはファミリービジネスではないでしょうか。ファミリービジネスは、昔からその地域に根付いて事業を展開している事が多くて、地域づくりにおいて非常に重要な役割があると感じています。
私は、地域づくりにおいては、予期もしないような新しい活動が次々と生まれることが最も大切だと考えています。そのためには、多くの人たちが参集して、相互作用を促すことのできるプラットフォームを構築する必要があります。そのときに着目すべきポイントは、強い関係性・弱い関係性が融合した構造をつくることです。強い関係性とは、よくコミュニケーションを取り合う関係性だと思ってください。このような関係性は同じような情報を深く共有できて、信頼が育まれやすいのです。ただ、それだけだと他の方が入りにくくなり、新しいことがおきにくいこともあるでしょう。地域のコミュニティも同じだと思うのです。だから昔からあるコミュニティを大切にしながら、弱い関係性の人もうまく加われるような仕組みをつくらなければならない。強い関係性でありながら可視性が高い。外から見ていても、活動内容がわかるようにする。そうすることによって新たな人が参加しやすいものになるのです。
殿内理事長
その新たなコミュニティをどのようにしていくことが望ましいのでしょうか。
飯盛先生
そのようなコミュニティは1回できたから終わりではなく、次々と新しいことや価値が生まれるようにダイナミックに変化、工夫しなければならないと考えています。そして、継続させていく為には主体性を育んで皆が自分の持っている資源(ヒト、モノ、カネ、知識や人脈)を持ちよって地域づくりをやらなくてはならない。何故なら予算には限りがあるからです。もちろん行政などの組織の予算だけで1つの事業が十分完結できる事がありますが、それだとその組織の事業で終わってしまいます。また、例え自分達の団体だけで全て出来るとしても、多くの人々の主体性を育み、継続性を考えるのであれば、いろいろな組織を巻き込む必要があって大学や市民団体からいろいろな資源を持ち寄ってもらって事業を行う。結果として一つの組織の運営予算も減らせることができるのです。持ち寄ってもらった資源を組み合わせてやることで新しいことや価値が生まれるだろうし、一番大きいのは自分たちの事業だと認識してもらうことだと考えています。これから求められるのは、色んな資源を持ち寄ってもらって新しい価値をつくる力だと思うのです。それが私がいう「プラットフォームアーキテクト」(プラットフォームを設計し、運営する人)です。地域づくりはひとづくりといいます。これからは、このような新しい価値をつくる事ができる人材をつくることが求められます。このような人材は、まず、自分が持っている資源を参加メンバーに与える事、知識、人脈を自らが示す事が第一歩です。さらに、青年会議所は、卒業があるので常に新しいメンバーが加わるからこそ「創発」しやすい環境にあるともいえますね。
殿内理事長
これまでの飯盛先生の活動の中で起きた「創発」を教えて下さい。
飯盛先生
私が提唱している、社会的創発、プラットフォームの概念は、地域づくりに役に立つ考え方だと思っていましたが、経営に取り入れてくれている企業もでてきています。新しいことを起こそうということは、地域づくりだけではなく、企業にも活かせるということのようです。大切なポイントは同じ部分があると思います。資源を持ち寄るという考え方は、オープンイノベーションという考え方に近いのかと思うのです。
*オープンイノベーションとは、自社だけでなく他社や大学などが持つ技術やアイディアなどを組み合わせ、新たな製品開発につなげるイノベーションのことを指す。
殿内理事長
私はよく青年会議所のあるべき立ち位置について考える事があります。コアの部分を青年会議所が担って、他の団体と連携していくというのが大事なのかと感じていますが、予算ありきという考えがあるのも事実です。ただ、予算ありきだとその事業の波及性が難しいのかと考えています。
飯盛先生
1999年から佐賀銀行と鳳雛塾というNPOをやっています。もともとは、社会人を対象とした地域のビジネススクールでした。鳳雛塾の卒塾生には、地域を代表するような企業を立ち上げた方などもおられます。2人で立ち上げたのですが、もともとは予算がなく、個人の知識や人脈の持ち寄りで始めました。事務局長はずっと銀行から出向してもらっていました。オフィスは佐賀大学の空き部屋をお借りし、行政の方も参加してくれるようになりました。塾生からはそれぞれ知識や技術などの資源を持ち寄ってもらっています。鳳雛塾の運営を通して各々が主体的に活動してくれて、知らない間にいろんなプロジェクトが生まれています。今では、社会人だけではなく小学生の子供達向けの事業にも広がっているのです。現在は、この事業がメインです。もう10年以上継続しているのですが、難しい経営の言葉は使わずに、「佐賀でどのようなものが売れているのか」「どういう価格帯で売るか、PRするか」という4P(製品Product、価格Price、流通Place、販促Promotion) で考えて、事業計画も子供たちが立てて資金調達もしています。そして、自分たちで仕入れて商店街で販売して最終的には決算してもらうところまでやっています。
殿内理事長
今では子供が、就業体験ができるテーマパークもありますが、それを実際に就業している感じですね。
飯盛先生
そうですね。子供達向けには2002年からやっています。これも当たり前のように出来るものではなくて、行政や教育機関のご理解が不可欠です。そして2004年から高校生、2005年から中学生の事業に広がっています。スタッフの間では「創発だよね!!」って言っています。当初は全くそのような事業に広がるとは思いもしませんでした。NPOでもこのような広がりを起こせるのだと感じました。だからこそ、出来る限り授業料を安くして、多様性な方が集まるプラットフォームをつくりたいと考えています。
殿内理事長
最後にご質問なのですが、メンバーが集って新しい何かを生み出すときにワークショップなど効果的な手法がありますが、どのようなものが効果的ですか。その手法を通して行っている地域づくりはありますか。
飯盛先生
地域づくりに関わる人材育成では、ケースメソッドを中核に据えて、レクチャー、ワークショップ、実践などをバランスよく取り入れる事が効果的だと実感して考えています。今も大学と地域との連携の研究・実践をやっており、これも効果的なプラットフォームづくりが大切です。あまりに強い関係性の人々だけですと他の参加者が参加しにくくなると思うのです。そうするとイノベーションは生まれにくくなる。一方、信頼のおける人たちの関係性も大切。だから、信頼のおけるコアメンバーを中心として、かつ誰もが参加しやすいような、オープンなプラットフォームづくりが大切だと考えています。ケースメソッドはコアメンバーを育むのに有効です。また、ワークショップは、オープン、対等に意見を出し合い、学び合う場として機能します。その結果、強い関係性・弱い関係性が共存して、資源持ち寄りの土台が築けるのではと考えています。
殿内理事長
「創発」について実践的な考え方を教えて頂き、ありがとうございました。
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対談後記
今回は、慶応義塾大学総合政策学部 教授の飯盛義徳先生にお会いさせて頂いた。
飯盛先生の『地域づくりのプラットフォーム』を読ませて頂き、まさに私のイメージしている創発を実践されている方であり以前からお会いさせて頂きたい方だった。青年会議所が行う事業の主体者は青年会議所メンバーであるが、いかに行政・大学・企業・市民の方を巻き込んで事業を行う事で波及性とあり、連続性のある事業になると私は考えている。その手法として、飯盛先生が実践されているプラットフォーム作りから始め、それぞれが持っている知識や人脈を融合させる事(資源の持ち寄り)で参加者が主体者の意識を持つという考え方は、とても参考になった。そして、次から次に繋いでいく事で創発されていく。青年会議所の事業も参加頂くだけではなく、持っている資源を持ち寄って頂き、人とひとが関わり合い創発させる事が必要であると感じた。
殿内崇生





